【正欲】朝井リョウ

異常性癖を持った人、いや、多数派ではない性癖を持った人と表現したい。

そんな人たちと多数派である異性愛者が「繋がる」ことで、本当の意味で人と人が理解し合うことの難しさを表現した本だった。

後半の八重子と大也が気持ちをぶつけ合う場面は夢中で読んでしまった。本来絶対に繋がれないであろう2人が、少しだけ理解し合えた瞬間で、言葉を尽くす大事さを痛感させられた。

啓喜が夏月に事情聴取する場面は、この小説のキモとなる部分だった。sexに何も感じないが同じ性癖を持っているという一点だけで、これほどまで深い繋がりをもてた関係。

一般的な夫婦が子育ての方向性の違いだけで、繋がりが壊れてしまうような関係。

人と人がお互いを理解し合うためには、言葉を尽くすか、本能的なものを直感的に理解するか、この2つなのかもしれない。